夕方頃に家に帰宅した雀は、部屋に入るとベッドに沈んだ。
ひどく疲れたような顔で真っ白な天井を見上げては、ため息をもらした。
突然の睡魔に襲われた雀はそのまま意識を手放した。


気がつけば、ぽつりと1人真っ白な世界に雀は立っていた。
『ここは……どこ？』
辺りを見ましても真っ白で、とりあえず雀は歩きだした。

(雀…)

どこからか女の子の声が聞こえる。
名前を呼ばれ雀は目を凝らしては辺りをもう1度見ると、少女が立っていた。
『杏…ちゃん？……っ!?』
驚いている雀の背後に黒いなにかが近づいていた。
雀はそれから逃れようと無我夢中で走りだした。

(雀…おいで…おいで)

雀の身体に黒いなにかがまとわりついては、逃がすまいと引きずり込んでいく。
少女は手を差し出しては雀の名前を呼んだ。
『杏ちゃん！』
力をふりしぼり手を伸ばすと少女の手を掴んだ。
少女が思いきり手を引き雀に顔を近づけた。

(ウソツキ)

『っ!!』

少女の一言に雀は力を無くした。
少女に突き飛ばされた雀は暗闇の中に落ちた……

『うわあああああああ』

次に気がついた時には自宅の自室だった。
ベッドに横になっていた雀はゆっくりと上体を起こしては息を整えた。
額はうっすら汗をかいていて雀は唇を噛み締めては頭を抱え込んだ。


ー観月 杏という1人の少女に彼は囚われていたー