「そうですね、でも私は接待のときに自分の体を使うなんて絶対に出来ませんね」と答えてやった。こんな男に私の惨めさを伝える必要などなかったけれど…つい本音が出てしまった。

あの時、私は接待のとき相手の要求をのんでいれば…たしかに会社には大きな利益があったのかもしれない、だけど私には出来ないと思った。今だってそんなこと許す気ない。

ハタナカとかいう社長は驚いてコチラをじーっとみていた。どうせ、おばさんのくせにとか思っているんだろうと私も感じたが、

「失礼ですけど昨夜のことで、私を雇う気もないでしょうし…ここら辺でいいんじゃないですか。ハタナカ社長さんはとても優秀な方でしょうから、私のような我慢を知らないおばさんを相手にするほど、お暇じゃないでしょう?失礼します。」

と立ち上がると、ハタナカという男、我慢できないと言ったかんじで吹き出し大笑いし始めた。

「あーおもしろい、すいません。おもしろすぎて。あなたみたいな人材はここにはいないんですよ、明日から、いや今日からでも良い。一緒に働いてもらえませんか?」と頭をさげられた。
人のこと、おもしろいだなんてどれだけ失礼なやつなの。面接前に秘書が運んでくれたお茶をいっき飲みする。

「前職でずっと営業職でしたよね、大井さん。この会社は今成長期でね、必要ない人材は一人もいないんですよ。一人ひとり欠けたらいけない存在の人間ばかりです。ぜひ、ここで一緒に頑張ってもらえませんか。」
そう言うと社長は、私を見つめた。

私の考えと彼の考えが同じであるということが、なんだか嬉しかった。

いつまでも早いところ就職を決めたい。こんな不景気だもの。自分の好きな仕事をすることがどれだけ大変なことか、私が一番よく知っている。
飛び跳ねてガッツポーズしたい気持ちを抑えながら、

控えめに
「今日からは無理ですが明日からでよければ、頑張りたいと思います」と一礼した。


明日から私はここで働くのかと、ロビーを眺め帰宅することにした。
ビルを出ると私は急いで、ゆかに電話をして就職が決まったこと。そこの社長が昨日のコンドーム男だったことすべてを話した。
飲みに行こうと誘われたけど、私は珍しく明日から仕事だからと断り…

いそいそと家に帰った。

面接が終わり、自宅に帰ったのもまだ昼すぎだったけれどすぐにすっぴんになりお風呂にはいりパックしながらずっと見れなかった韓流の恋愛ドラマを見ることにした。

明日から仕事だ!あのコンドーム男と、うまくやっていけるかとか考えたけれど…社長といち社員だもの。たいした接点もないだろうと思いながら、その日は早めに就寝した。。。