翌日鏡を見ながら、ため息をついた。昨日の疲れがなかなか抜けなくなってきた。昔は一晩中遊んだところでどうってことなかったのに。

「おばさんなんかじゃないわよ」

鏡に向かってつぶやいてみた。
もちろん鏡の中の私は何も応えてはくれないけど。

リクルートスーツに身をつつみ、11時からの面接に向かう。
今日は株式会社 サンシャインとかいうだっさい名前の会社だ。今現在は大きな会社ではないけれど…別に大きな会社に入職したいわけではないのだ。やりがいと生きがいを仕事に感じていたあたしは誰にでも出来る仕事をするんじゃなくて、大井裕子でなければ出来ないね、この仕事!って思われるような仕事がしたかった。

インテリア関係の仕事だから、会社内の内装はとてもおしゃれだ。

まるでカフェにいるみたいな…くつろげる空間だった。

面接会場の前まで秘書だろうか、こちらでお待ちくださいときれいなかわいい女の子に案内された。緊張というよりも度胸と言ったほうがいいだろうか。なんだかワクワクしていた。

「大井さん、どうぞお入りください」

男性の声と共に「失礼いたします」と一礼し、部屋へ入ると面接官の男はこちらもみずに椅子にかけるようにと指示した。

そして男が顔をあげたとたん、私はきっと青ざめただろうし…この目の前にいる男も目を見開いた。

昨日のコンドーム男じゃないの!私のコンドームを持ち去った男だ。一瞬気まずい雰囲気に包まれたが、男は社長だと名乗り名刺をよこした。

株式会社 サンシャイン

Asahi
Hatanaka 

何かっこつけてん。日本人なら、ちゃんと漢字で名刺作れよなんて内心つっこんでしまった。

「以前は、株式会社TTにいたんですね、そちらを辞めたのはなぜですか?」と質問に

「私は自分の信念を曲げることは出来ないと思ったので、そのせいで上司と折り合いが悪くて退職しました。」素直に答えることにした。どうせ、この男は私を雇うつもりなんかひとつもないだろう。ただ追い返すことが出来ないために、形だけの面接をしているのだろう。

「でも、会社っていうのは時に自分の信念を曲げることも必要なんじゃないですか?そういうところが我慢できないって言うのはあなたのわがままじゃないですかねぇ」とまるっきり嫌味を言ってきた。