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「……懐かしい」

「……そうだな」


私と夫は30年前と同じ場所に立っている。

30年前、一生一緒に生きていくと誓った場所。

30年の月日は長いようであっという間で。

あの頃は真新しかった式場も、年季の入ったレトロな雰囲気を醸し出している。


「ご両親、こちらへ」

「――はい」


スタッフの人に呼ばれ、娘の元に向かった。

――今日は私たち……私と圭くんとの間に授かった娘の結婚式だ。





フラワーシャワーを浴びて幸せそうに笑う娘の姿を見つめる。

娘は大恋愛の末の結婚。

たくさん悩みや相談を受けたことが脳裏に蘇る。

一時は別れると、毎日のように泣きながら言っていた時期もあったっけ。

でも、無事に晴れやかな日を迎えることができて本当に良かった。

娘の幸せが私たちの幸せだから。


「……ねぇ、お父さ……ううん、圭くん」

「ん?」

「また二人になるのね」

「……あぁ、そうだな」


私たちには二人子どもがいるけど、一人目の息子もすでに所帯を持っている。

娘が嫁いでしまったら、また私たちは結婚当初のように二人で過ごす日が始まる。