ドォン



花火の音が遠くに聞こえる。



大きな声を出すあたしにビックリしたのか、愛翔は目を見開いたまま動かない。



「そうかよ……そんなに好きなら俺なんかのとこに来ないでさっさとそいつに告りに行けよ」



そう吐き捨てて立ち上がると、愛翔はあたしに背を向けて歩き出した。



冷めきったその顔は本当に怖くて怖気づきそうになる。



「ま、待ってよ……‼」



慌てて立ち上がり、その背中を追いかけた。



だけど、浴衣なのと慣れないゲタを履いているせいで思うように走れない。



愛翔はあたしの声に気付かないでどんどん歩いて行ってしまう。



なんで……待ってくれないの。



どんどん遠くなる背中がボヤけて見えた。