「…なんでっ…!」 「ごめんね、祐…私、もう行かなきゃ」 彼女はタイムミリットだと言うように、この場を去ろうとする。 悠美の長い黒い髪が、風で揺れる。 「…待って」 彼女の腕を掴む。 ぎゅっと力を込めて、どこにも行けないように。 俺から離れないように。 「……祐、ごめんね」 ずるい、ずるい。 君はずるい。 そんな顔して、俺を見るな。 酷く、残酷だ。 「放して」 静かに呟いた彼女に、そう従わなければいけないのかと思う。