合計、七十五回目のため息。

「だからさーっ。何があったんだよ・・・。」

「お前に話しても・・・。いや、むしろお前だから・・・・話せる、かもな。」

あのちゃらんぽらん(だと思う)の平助がここまで悩むなんて、よっぽど大変な事でもおこったのだろうか。
いつだってポジティブだったあの、平助が。
まるで、ゾンビのようによれよれになって生気が全くない。
目なんて、白目が無いと思えるほど真っ黒だった。
目が死んでる状態、と言うのだろうか。

「・・・あの、さ。誰にも言わないで欲しいんだ。まだ、伊東先生も話していいと言っていなかたしな・・・・。」

「伊東先生」という人物がだれなのか知らないが、おそらく重要なのだろう。
少なくとも、平助よりは位が上のようだ。

「・・・で?その伊東先生、がどうしたんだよ。」

「伊東先生は新選組の参謀なんだ。・・・でも、一昨日その伊東先生が新選組を脱退すると言ったんだ・・・・。」

それがどうしたのだろうか。
出て行きたいのなら、出ていかせればいいのに。
なぜ、それでこんなに悩んでいるのだろうか?

「新選組を脱退することは、局中法度に背くこと。だから、伊東先生は「脱退」じゃあ、切腹になってしまう。」

「・・っなんだよ!それ!局中法度って・・・!!なんで隊から出るだけで命まで差し出さなきゃ・・・・・っっ!!!」

「これは、土方さんが考えたものなんだ。・・・多分、入隊するときに覚悟を決めろとう事なんだと思う。」

なんて時代だ。
平成では、死刑を廃止するという動きさえあるのに。
ココでは・・・。
人を何人殺めても死刑にならないのに、隊を出るだけで死刑に・・「切腹」になるのか。
相変わらず、オレの理解の及ばない時代。
オレはそれを、改めて感じたのだった。