通されたのは、前に来た部屋。
ここで近藤さんに延々話を聞かされたんだった。
部屋には、オレの知ってる顔がたくさん並んでいる。
土方さん、近藤さん、原田、永倉、総司、頭に包帯ぐるぐる巻きの平助。
斎藤が総司の隣に腰をおろした。
近藤さんに言われて、扉に一番近い所に座った。
あんな事のあった翌日だし、みんな暗い顔をしているかと思ったけど、そうでもなかった。
土方さんが口を開いた。
「中谷。平助のこと、すまなかった。・・・ありがとな。」
この人のこんなに優しい顔は初めて見た。
前に屯所であった時も、池田屋でも厳しい顔してたから。
「い、いや別に・・・。あ・・・あと、勝手に池田屋入って、すいませんでした・・・。」
「その件はもういい。結果的に平助は助かったんだからな。」
平助が助かったのは嬉しいけど、もう起きあがれるなんて、どんだけ丈夫なんだよこいつ。
「・・・で、本題は?」
オレが土方さんに聞くと、「それはもう終わった。」と即答された。
じきじきに御礼を言いたかったってことか?
「仁!!ありがとな!!」
平助がいつもの笑顔で頭を下げてきた。
「いや、いいよ!べつにそんな・・・!!」
いきなりヘコヘコされると困る。
かなり調子が狂うし。
「よおおっし!!それじゃ行くぞ!!」
と、ガッツポーズで永倉が立ち上がった。
「行くって・・・?」
オレがたずねると、永倉、原田、平助はそろいもそろって、
「「「島原だよ!!!」」」
と叫んだ。
「何言ってんだ!!まだ真っ昼間だぞ!!」
土方さんが厳しい顔に戻って、3人を怒鳴りつけた。
「仁への御礼と、平助の回復祝いだよ!!」
原田がそう言って、オレの腕を掴んだ。
「へ?い、いや困るって!帰って仕事しなきゃ・・・!!」
島原が何かなんて知らないけど、菊池さんは怒ってた。
早く帰らなくちゃ。
そんな事も聞かず、原田をオレを引っ張っていった。
・・・オレの襟首をつかんで。