その日の夜。
オレは、本野さん家に洗濯物を届けに行った。
急ぎの物だとかで、本来なら明日届ける予定の物を、とどけるんだ。
夜道は危ない、とかで刀を二本差しで出かけた。
前々から思ってたけど、危ないってなんなんだ?
オレは男なのに。
チカンでも出るってのかよ。



帰り道。
のんびりと歩いてると、やけに騒がしい音と声が聞こえた。
それは、オレの進行方向から。
音源辺りは、提灯がたくさんあるらしく、明るかった。
避けようと思ったけど、ここを通る以外の帰り道を、オレは知らない。
しかたなく、突っ切ろうとした。
だんだん近づいてくると大勢の人の前に新選組隊士が1人、立ちはだかっているのが見えた。
しかもその隊士は、土方さん、だった。
自ら巡察する立場の人じゃないはずだ。
なんでこんなとこに。
1人で?
土方さんの居る道は、たしか、「池田屋」の前だ。
さらに近づくと、池田屋の中から、キンキンと音がする。
まるで、金属同士のぶつかり合いのような・・・。
土方さんは、大勢の人と話してるみたいだ。
オレに、まだ気づいていない。