夜中。オレは布団に入って、何と言って謝るか必死に考えていた。
「申し訳ありません」・・がいいか、敬語を使うなと言われたんだから、「ゴメン」にするか、ずっと悩んでいた。

そういえば。
最近、全然平成に帰りたいと思わないな。
洗濯屋での暮らしが意外に楽しかったからか。
従業員のやつらと話したり一緒に団子屋にいったり。
ずっと、のどかで平和な暮らしだった。
平成のように、テストもない。成績で怒られることもない。
ここは、オレにとってまさに天国だった。

逆に、もう平成には帰りたくなかった。
家族は、父さんも母さんもオレに暴力をふるうし、友達と呼べるような奴は、全然いなかった。友達と思っていた奴も、オレといつも一定の距離を保って、あまりちかづいてこなかった。
それもこれも全部兄さんのせいだ。
いや、あんなやつ、兄でもあるもんか。
兄さんは、人を殺した。ナイフで。クラスのやつを。
おかげで、オレは一瞬で殺人犯の弟という肩書きが付いてしまった。
オレは何もしていないのに。

そのまま、じわじわと眠気がおそってきて、オレは眠りに落ちた。