「ごめん」
「あ、いいよいいよ!出たら?」
「……うん」


電話のディスプレイを見て、莉桜は出ることをためらっていた。

たぶん相手は浩介さんだろう。

なら、余計に出てもらいたい。


「俺なら気にすんな」
「……」


そこまで気を使われたら、仕方ないと思ったのか、莉桜は立ち上がると応答ボタンを押しながらキッチンへと行った。

パタンとドアまで閉められ、たぶん俺には会話を聞かさないようにしている。


だけどテレビもついていないこの部屋は、思った以上に静かで、全てではないけど時折莉桜の声が聞こえた。


「うん……来週でしょ。行くよ」


決して明るいとは言えない声色。

もともとハスキーに近いけど、それをとっても暗い声だ。


そんな莉桜の声を聞きながら、なんとなく莉桜の部屋を見渡していた。