プルルルル……

「!!」


浩介さんが立ち去ってしばらくしたあと、突然携帯が鳴る。

着信相手は莉桜からだった。


俺は少しだけうろたえるものの、平常心をたもって通話ボタンを押した。


「もしもし……」
《何?》
「え?」


電話越しから聞こえる莉桜の声は、いつも通りのクールな声で、さっきの取り乱した姿はもういなかった。


《電話、2回もかかってたから》
「あ、えっと……」


本当は、莉桜に話があったから。と言うつもりだったけど、さっきの会話を聞いてしまったせいか、その言葉が出ない。

結局……


「俺のとってる授業が休講みたいでさっ……
 2限で帰るから、莉桜はどうかなー、と思って電話したんだ」


そんな嘘を言ってしまった。