結局、莉桜は目が覚めたあと、何も覚えていなかった。


もしかしたら、覚えていないふりをしていただけかもしれない。
だけどもしそうだとしたら、まだ触れてはいけない気がして、結局何も問い詰められなかった。



莉桜は自分の家へ帰り、そのまま次の日を迎えた。



「おはよーっす」
「……おは」


今日は2限から。
席についていると、雄太が隣に座ってきた。


「おまえ、くらっ……。
 もしかして、莉桜ちゃんにフラれたとか?」
「んなわけねーだろ」


すぐにちゃかしてくる雄太。
俺は今、そんなテンションで相手している余裕はなく、適当に相手をして過ごした。

途中で雄太も察して、あまり深くは絡んでこなかった。



昨日、莉桜が帰ってからも、ずっと一人で考えこんでいた。


そしてだんだんと見えてくる……

莉桜がずっとため込んでいること……。


だけどそれは、俺が避けたいことでもあった。