「なんなんだよ…もう……」


近くにいることを許されたはずなのに、決して踏み込めない一線。


それを問い詰めてしまったら、莉桜が壊れてしまいそうな気がして、いつも聞けなかった。


いつか話してくれるまで待つ。
俺が絶対にこの子を守る。


そう決めているはずなのに、時々無性にもどかしくなる。


俺は抱きしめている腕の力を強めた。


「莉桜……」

「……」


もう一度名前を呼ぶと、莉桜はゆっくりと振り返った。

その瞳には、もう涙はなくなっている。


「いつき……」


俺の名前を呼び、そっと頬に手をあててくる。
俺はその手に自分のを重ねると、ゆっくりと口元へもっていった。



「もう俺……待てない」



そして小さな唇に、そっと自分のを重ねた。