俺も莉桜も上京組で、家は大学の近くにある。

莉桜の家には行ったことないけど、こうやって莉桜が家に来ることは何回かあった。


「ん」
「ありがと」


コーヒーを入れて、莉桜に渡す。
こんな光景にも慣れてきた。


莉桜の今の表情は、まったく読み取れないほどの無表情だった。


「莉桜?」
「何」
「笑顔笑顔」


俺は莉桜のほっぺたをつついた。

時々こうやって、いつも無にしている莉桜を笑わそうとしている。
だけど……


「……無理」


なかなか成功はしない。


「樹って、ほんと変わってるよね」
「ん?」


コーヒーに口をつけながら、俺の顔をちら見してそんなことを言われた。