「また、悲しい顔になってる」
「え……?」
さっきまであんなに楽しそうに笑っていたのに、莉桜の顔は再び悲しさに溢れた顔。
俺はそれがつらくて仕方がなかった。
「さっきはちゃんと笑ってたのに」
「……あんなに笑ったのなんて、数年ぶりだよ」
莉桜は体育座りをしたまま、海の向こう側を見ていた。
「いつも、何を見てんの?」
遠い向こうを見ている莉桜。
見ているのは、やっぱり莉桜の話していた恋人なのだろうか……。
だとしたら……
「……」
莉桜は答えない。
それが無性に悔しくて仕方がなかった。
どんどんと顔が曇って、今にも泣きだしそうな顔をしている。
「莉桜……」
名前を呼ぶと、莉桜はゆっくりと振り向いた。
そして俺は、
「……」
莉桜の唇に、そっとキスをした。

