「はい」
「さんきゅ」


海から上がって、石段に座っていると、莉桜が自販機からコーヒーを買って渡してくれた。


「あー、うめぇ……」


海で冷え切った体に、温かいコーヒーが染み渡る。


「コーヒー……砂糖とミルク入りでよかったの?」
「おう。ブラックは苦手」
「……お子様」
「うるせ」


なんと言われようと、ブラックのうまさはまだ分からん。

特別甘党というわけじゃないけど、コーヒーは微糖くらいがうまい。


「………ほんと…似てないなぁ…」

「え?」


突然、莉桜が小さな声でつぶやいた。

俺は気になって、莉桜へと振り向く。


「ううん。なんでもない」


莉桜は笑った。

悲しい顔で。