「………最悪…」


深さ30cmにも満たないそこでも、転ぶとなればだいぶ濡れる。

俺はポタポタと滴を垂らしながら、嘆きの声を漏らさずにはいられなかった。


「………ぷっ…」


だけど突然、頭上から吹き出す声が。

そしてそれは……


「あはははっ……樹、ウケるっ……」


海によく似合う、とても明るい笑い声へと変わった。


「り、お……?」
「もうっ……何勝手に一人でコントしてんのっ……ははっ」


俺は、莉桜がこんなにも明るく笑うことに驚いて、つい間抜けな顔をしてしまった。

莉桜はツボに入ったのか、なかなか笑いを止めない。

そんな莉桜の姿が嬉しくて、次第に俺も笑いがこみ上げてきた。


「う、るせぇっ……だいたいお前がっ……」
「もとはと言えば、樹でしょ?」
「う……そうだけど……」
「あははっ……!」
「……ははっ」


そして俺たちは、しばらく海の中で笑い合った。