「熱があんのに、そんなとこ登んな」
「…っ」


めずらしく、俺の存在には全く気付いていなかったらしい。

莉桜は俺の声にビクッと驚くと、下にいる俺へ振り向いた。


「……なんで…」
「迎えに来た」
「意味わかんないんだけど」


その声は、おそらく大学内で評判される冷たい口調。

だけど俺はもうひるまず、莉桜に言葉を続けた。


「俺、バカだからさ。
 あんまめんどくせーこと、考えたくないんだよ」

「何言って……」


「莉桜が好き。

 莉桜の笑顔が見たい。

 ただそれだけなんだ」

「……」


その言葉に、莉桜は目を丸くさせて驚いていた。

俺はただ微笑んでいた。