哀しみの音色

 
「ころ…す……?」
「うん……」


信じられない気持ちで、莉桜に問いかける。

だけど莉桜は、力なく笑って、うなずくだけだった。


「だからあたしなんかやめたほうがいい。
 あたしは、樹が思っているような女じゃないから」


それだけ言うと、莉桜はベッドから出た。


「りっ……」


名前を呼ぼうとしたときには、すでに莉桜は着ているティーシャツに手をかけていて、まさに脱ぎ捨てようとしている。

俺は思わず、目をそむけた。


「ありがとう。世話になったね」

「えっ!?」


だけど次に莉桜に目をやったときには、すでに莉桜は着ていた服を身に着けていて、鞄に手をかけていた。


「どこ行くんだよ!?まだ熱っ……」

「大丈夫」


拒絶。

その言葉が一番似合う、冷たい微笑みだった。


俺はかける言葉が見つからなくて、結局また、部屋から出ていく莉桜を追いかけられずにいた。