「莉桜、は………」
改めて呼んでみると、すごく照れる。
だけどなるべく平常心を保って、言葉をつづけた。
「莉桜は……もっともっと、人に頼るべきだよ」
「……」
そう言った瞬間、彼女の瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
「え?なんで泣くんだよ!?」
「……ごめ……。だってアンタが……」
莉桜は次の言葉を飲み込んだ。
この後、いったい何を言おうとしたかなんて、俺には全く予想できなかった。
ただなんとなく、感じていた。
莉桜はいつも、俺の先に、別の誰かを見ているような気がする……。
だから俺は……
「アンタじゃない」
どうしても、莉桜に俺を見てほしかった。
「俺は、アンタって言う名前じゃない」
「……」
莉桜は少しだけ驚いた顔をしていた。
そんな莉桜を、俺は見つめ続ける。
莉桜は一度俯き、ゆっくりと顔を上げると……
「………いつき…」
小さく、儚い声で、俺の名前を呼んだ。
それが、彼女に呼ばれた、初めての名前だった。

