哀しみの音色

 
「で?」
「え?」


急に振られる言葉。

つい、同じように聞き返してしまう。


「なんであたしに会いたがってたの?」
「あ、いや……そういうわけじゃ……」
「……そう」
「や、そうなんだけどさっ」


何一人テンパってんだ?
と、思わず心の中で突っ込む。

彼女はそんな俺に苦笑すると……


「あたしは………あまり会いたくなかったんだけどな……」


ショックを受ける言葉を言った。


「ご、ごめんっ」
「ううん。そういう意味じゃないの。
 全然……」


会いたくなかったと言われ、あわてて帰ろうかと思ったけど、まるでそれを制するように否定する彼女。

俺にはやっぱり、この子の考えていることが分からない。


そのあとも、かける言葉が見つからなくて、俺たちはただずっと空を見上げていた。