哀しみの音色

 
「あ……っと……ごめん」
「べつに謝ることじゃないけどさ」


淡々と話す彼女。

俺もどうして、こんなにも彼女ともう一度話したいのか分からなかった。


「そんなとこに突っ立ってないで、上がってきたら?」
「え?」
「上。結構気持ちいいよ」


思いがけない誘い。

俺は言われるがままに、ジャングルジムに手をかけた。


こんなのに上るなんて10年ぶり。
意外にこれって、力がいるんだな……。

俺は子供の時のように、サクサク登れないことにちょっとショックを受けた。


「よっと……」


なんとか頂上まで上がりきって、彼女の隣に来た。

彼女は横目で俺の顔を見る。


「高いとこ、平気なの?」
「まあ、とくには……」
「そっか」


そして目線を外す。

俺も言葉に困った。