夢か…
現実か……


そんなのがどうでもよくなっていた。


目の前に最愛の莉桜がいて
その莉桜が俺を求めてくれて


これ以上の幸せなんていらない。


俺はずっとここにいたい。


いつしかそう思うようになっていた。



(………っ…)



ふと聞こえた。

誰かがすすりなく声だ。


(……ぃ…つき……)

「?」


俺の名を呼んでる気がする。


だけど振り返っても、そこには誰もいなかった。


「樹?どうしたの?」
「え?」


そんな俺を、不思議そうに見上げる莉桜。


「どこも見ないで。
 あたしだけを見て」

「……当たり前だろ」


俺は泣いている声を振り切って、目の前の莉桜を抱き寄せた。