「ちょっと買い出し行ってくるわね」
「あ、はい」


おばさんはそう言うと、病室を出て行った。


病室には、あたしと樹の二人が残され、また静かな時間が流れ始めた。


顔に残る痛々しい傷。

呼吸は規則正しく吐き出されていて、ただ眠っているだけのように見える。


だけど開くことのない瞼。
繋がる点滴。


「……」


もう、枯れるほど泣いたはずなのに
じわりと涙がうかんできた。


「……いつき…」


呼んでも、返ってこない名前。


「ねえ……あたしのこと、好きなんでしょ?」


返事をしてくれない問いかけ。


「……なんとか言いなよ」


喧嘩腰に言ったって、何も言ってくれない。


「……っ」


あたしの瞼から、また溢れるほどの涙が零れ落ちた。