「やっべっ……遅れたっ……」
俺は小さな包みをポケットに入れ、大急ぎで走っていた。
向かっている先は、莉桜との待ち合わせ場所。
待ち合わせ時間はとっくに過ぎていた。
「莉桜のやつ、絶対怒ってるよな……」
俺は、無言で怒る莉桜を想像して、ぶるっと身震いをした。
事の発端は昨日。
浩介さんからの電話だった。
(もしもし?)
(もしもし、樹くん?久しぶり)
(お久しぶりです)
浩介さんと話すのは、本当に久しぶりだった。
莉桜と本当の意味で両思いになってから、3か月。
そのあと、浩介さんに報告したときちょっと話したくらいで、それ以来連絡を取っていなかった。
(どうしたんですか?)
(あのさ、知ってたら余計なおせっかいなんだけど……
明日、莉桜の誕生日だって知ってる?)
(はい!?)
それは、俺の思ってもない言葉だった。