浩介さんが去ると、俺は莉桜のもとへしゃがみこんだ。


あどけない寝顔。

この寝顔からは、想像つかない悲痛な過去。


「……莉桜…」


俺はそっと、莉桜の髪をかきあげた。


「………ん…」


その手に反応して、莉桜の眉がぴくっと動いた。
そしてゆっくりと、瞼が開きだす。


「起きた?」
「………い、つき……」


うっすらと目を開けたまま、俺の名を呼ぶ莉桜。

正直、「樹」と言われて安心していた。


「あたし………っ!!」


起き上がったと同時に、さっきのことを思い出したのか、莉桜は俺へと背を向けた。

俺はひるまず、莉桜を見つめる。