初めて見た莉桜の印象は、相手のことを考えない冷たい女かと思った。

ストレートに物事を吐き、必要最低限の言葉は言わない。


だけどそれは、彼女の環境がそうさせてしまったんだ……。


「でも、根はいい子なんだよ。
 兄の俺が言うのもなんだけど」

「わかります……。
 本当は、感情も豊かだってことも……。
 俺、彼女の笑顔、すげぇ好きです」

「そっか」


俺の言葉に、浩介さんはにこっと笑った。


「じゃあ、大丈夫かなっ」


そして立ち上がると、「ふぅ」とため息をはく。


「莉桜のこと、よろしくな。
 樹くんが、蓮じゃないってこと、ちゃんと分からせてやれ」

「……はい」


俺は深く頷く。

絶対に、莉桜の心の闇から救ってやると……。


浩介さんは莉桜の部屋から出ていった。