「……ひいた?」

「え?」


黙りこくっていると、浩介さんが俺の顔を覗き込んできた。

俺は慌てて、首を横に振る。


「そんなことないです。
 むしろ、そんなことで悩んでいる莉桜を早く救わなくちゃ、って思いが強くなりました」

「よかった。樹くんなら、そう受け取ってくれると思ってた。
 ……莉桜は…人よりちょっとだけ不器用すぎるからさ……」


浩介さんは安心した笑みを向けると、莉桜の髪をそっと撫でた。

その表情は、妹を心の底から心配する兄の顔。


「この子、すげぇ綺麗でしょ?」
「え?あ、はい……」


唐突な質問。

まさかそんなことを言われると思っていなかったので、一瞬どもってしまったけど、確かに莉桜は綺麗すぎる美人だ。


大学でも、噂が出回るくらい。


「そのせいもあって、昔から、よく人にひがまれたり、あることないこと噂されたりすることが多くてさ……。
 人と接するのが苦手になっちゃって、しまいにゃ、寄せ付けない性格になっちゃったんだよね」


その言葉に、確かに心当たりはあった。