「莉桜の右足に大きな傷があるのは知ってる?
 あれはその時の傷。
 本当は痕が残らないほど綺麗になるものであったはずなのに、莉桜が自ら医師に頼んだんだ。
 絶対に消えない縫い方にしてくれ、って……。

 一生自分は、この傷とともに生きていくと……」


「……」


一度だけ見たことがあった。

莉桜の右の太ももに残る、今も痛々しい傷痕。

その傷痕に気づいた瞬間、大きく拒まれ……そして莉桜は何かに怯え始めた。


その意味が、今ようやくわかった。


「これが、莉桜の抱えるもう一つの真実。
 莉桜はそれ以来、誰かを好きになることが怖くなったんだ。
 自分が好きになったら、またその人を失うんじゃないかと思って」

「……そん…な……」


莉桜の怯えているものがようやく分かった。

だけどそれは、あまりにも理不尽で、哀しみに満ち溢れていた。