「何も、聞いたことなかったんだよね。
蓮のこと……」
「はい……」
俺の返事を聞いて、浩介さんは莉桜を見る。
そしてゆっくりと口を開いた。
「蓮は……
莉桜をかばって死んだんだ」
それは、あまりにも重い真実だった。
「いつものように、街中でデートしているときにね……
建設中の建物を通り過ぎようとした。
だけどそのとき、たくさんの鉄骨を積んだワイヤーが切れて……
二人の上に落ちた」
「…っ」
「蓮は莉桜をかばうように咄嗟に覆いかぶさったんだ。
それもあって、莉桜は多少の怪我はしたものの、命に別状はなかった。
だけど鉄骨すべてを直で受けた蓮は……即死だったんだ」
胸がぎゅっと痛くなった。
想像するだけで、張り裂けそうな痛みが襲う。