「早いよ……蓮がいなくなってから、時間が経つの……。
 毎日が、色をつけずに過ぎてく……」


莉桜から出る言葉は、俺には悲しいことばかりだった。


蓮さんを想う莉桜の気持ち。
俺がいかに、蓮さんの面影を重ねられていたのか……。

それを実感させられる気がした。

だけど……



「………そんなふうに、去年は言ってたね」



その言葉とともに、俺の重しは取り除かれていった。


「今年は……ちょっと違うの。
 最近また、蓮といたときみたいに、笑えるようになったんだよ」


莉桜の言葉が聞きたくて、俺はもう少しだけ近寄った。

莉桜は蓮さんへの呼びかけに夢中で、気が付くことはない。


「蓮……どうしよう……。
 あたし………時間が少しずつ、動き出しちゃってる……」


後ろから見える莉桜の肩は、だんだんと震え始め、必死に何かと闘っているような気がした。