ノートを受け取って、問題集の続きを始めた


また、部屋には紙の擦れる音やシャーペンをノックする音しか聞こえなくなった

『…』

ちらっと、ペンケースの横に置いた白い四角いケータイを見た

【18:02 Decenber 24】

『………』

次は、目だけを動かしてあたしの目の前で脇目も振らずにノートに文字を書き続ける男の子を見た

…この人…ホントにあたしの彼氏なんだよね…?
それで、今日はホントに12月24日なんだよね…??

そして、哀しい事実だけど、あたしと目の前に居る人は高3なんだよね


「……何?」

あたしの視線に気付いたのか、顔を少しだけ上げて不審そうに尋ねてきた

『えっ?あ、いや…別に』
「……」

また黙って自分の世界に入っていった

そりゃあ、竜也(タツヤ)は学年1勉強できるしさ
竜也の受験する大学は並大抵の努力じゃ合格できないけどさ
あたし達は受験生だけどさ

…こんな日でも、ずーっと勉強してなくてもいいんじゃない?

『……はあ…』

知らないうちに、溜息が出ていた
竜也が顔を上げて、竜也から話しかけてきた

「師走(シワス)、どうした?」
『ぇえっ?』
「何溜息ついてんの」
『え…別に何も…』
「…師走、大学行かねえの?」
『あ、うん…専門学校…』
「何か将来の夢でもあんの」
『う、ん……』

ちょっと照れくさくなって、顔を伏せた
夢があるから専門学校行くんだけどさ
他人に言うのはちょっと恥ずかしいな…

『…デザイナーに…なりたいなぁなんて…』
「服?」
『うん…まあ』
「へえ」