「あ、金魚すくいやりたい!!」
『俺もやるーっ』

皿と薄い紙の張ったすくいを貰って一匹
黒い小っこいヤツに狙いを定めて――









『ここだっ!!!!』



目を開いて一気にすくい上げる
見事に俺の皿の中に滑り落ちてくれた

恐らく祭りの雰囲気に似合わない半分部活モード(笑)の俺の行動を見て文月が固まってた
その固まり方がマジで何も動かなくて笑っちまう

『どした?(笑』
「す…凄いね…孝司…何か野球やってるみたい…」
『んー…俺、こうゆうのって本気になっちまうのな(笑』

今度は部活モードにならないように笑いながら2、3匹すくった
黒のヤツと赤と白のまだらのヤツ

「すっごい孝司ー!!あたし出目金しか捕れてないよー;」
『あ…出目金なのな(笑』

それにしてもデカいの捕ったなー
でも、そのデカいので文月の紙は破れたらしい
俺も最後に出目金捕ろうとしたら失敗した

立ち上がって周りを見渡す

『さて…と…花火まであと10分だから、もう移動しよーぜ。俺すっげぇ特等席見つけ…』
「待ってよ孝司ーっ;」

あ、そういえば文月浴衣だったっけ
慌てて出目金の入った透明の袋を提げて小走りで追いついてくる

『あ、馬鹿そんな走ったら…』
「…ぅわっ!!!!…っとっとっと!!」

文月が案の定コケたから駆け出したら、持ち前の運動神経で綺麗に体制を立て直した

『悪り;』
「あ、大丈夫っ」

歩く速度を遅くして文月のスピードに合わせる
下駄を気にしながらつまずきながら歩く文月は最高に可愛くて…


…待て待て俺。耐えろ



特等席につくまで