学園祭が始まると司の仕事は警備と言っても実際は、来校者の案内や迷子や怪我人が出ないかどうかの見回りだった。
「やれやれ。さて、落ち着いてきた事だし、クラスの様子でも見に行くとするか」
 教室の前に来ると、そこには順番待ちの列が出来ていた。
 美琴の読みはずばり的中したらしい。
「あいつ才能あるかも知れないな」
「おっ司やんか。いいとこにおったで」
 ひょっこりと顔を出した美琴と目が合う。
「なんだよ?」
「ちょっとトラブってんねん。助けてくれへん」
「ああ。いいぜ」
 ブーたれている男の客たちを無視して、教室へと入る。
「どうかしたか?」
 中に入ると、何人かの男の客と顔を俯かせている薫がいた。
「あ、司さん」
 司の存在に気付き、薫の表情が少し和らぐ。
「こいつらがいちゃもん付けてくんねん。どうにかしてくれへん」
「いちゃもん、ねえ」
 司は薫を庇うように前に立ち、問題の客を見る。
「失礼ですがお客様。他のお客様にご迷惑がかかるので」
「あんだ? そこの彼女がだな…………あ、あんたは」
「ん? お前らは確か」
 司の顔を確認した途端に客たちの表情が強張った。
「お、お久しぶりです。ここに進学してたんすね?」
「知り合いなん?」
「ん? ああ。昔やんちゃしてた時にちょっとな。関東最大の族の総長やってたんだが、そん時の子分だった連中だよ」
「そ、そんか悪歴が御影君にあったなんて」
 桜子が一歩引いて驚いていた。
「まさかお前ら。ここで悪さするつもりじゃねえだろうな? 他にもいるんだろ? もし誰か一人でも悪さしたら、昔の俺が制裁するから覚悟しとけってほかに連中に言っとけ。今すぐにだ」
「は、はい!」
 男たちは血相を変えて教室を飛び出して行った。
 ちなみに余談ではあるが昔司は一人で百人近くの族を五つほど、潰した事によりついたあだ名が、司に目を付けられたが最後、悪夢の始まりと言う理由で悪夢の王と呼ばれていた。
 しかしそんな深い過去など知らないクラスメートは不良を追い払ったとして、尊敬の眼差しと拍手を司に送っていたのであった。