色々と擦った揉んだとあったが、無事学園祭を迎える事が出来た。
 正直司は家を出される覚悟をしていたが、どうやら向こうと父親の話し合いにより、奇跡的にお咎め無しとなった。
 なんでも婚約するはずだった相手は神楽家を自由にするために、薫を利用するだけ利用して捨てるつもりだったらしい。
 ここは素直に父親に感謝した司であった。
 そして学園祭当日、司のクラスはなぜかメイド喫茶だった。
 これは美琴の案で下で働く従者の気持ちを少しでも理解するため。との事らしい。しかも各家のメイド服を着る事になった。
 色々メイド服にもバリエーションがあるんだなぁと関心していた司であったが、美琴の本心をずばり見抜いていた。
 普段は男子禁制な学園だが、学園祭だけはオープンとなる。
 しかも生徒たちは皆着慣れないメイド服で初々しく、男女関係なく受けるだろう。
 となれば当然、売上も良くなるだろう。
 つまり本音は金儲けである。
 まぁ本人もメイド服を着ているから許そう。
「………しっかしなぁ」
 司は自分の姿を見下ろす。
「なんだかここに来てから正装を着る回数が増えているような」
 完全に場違いな空気には慣れてきたが、もっとちゃんとした場で着たいものである。
「御影様。ご機嫌よう」
「ご機嫌よう。御影様」
「ご、ご機嫌よう」
 いまだこの挨拶にはなれず、どこかぎこちないのが、自分でも分かる。
 声をかけてきた生徒はキャーと恥じらいながら、嬉しそうに去っていく。
「……ホントなんだかなぁ」
 どうやらどこから薫の件が洩れたらしい。
 気が付けば、薫を勇敢に助け出したナイトだと言う噂が広まっていた。
「まあ出所は大体予想出来るけど」
 しかし噂が広まってい以来、生徒から声をかけられる回数学園祭増えていったのも事実である。
 学園祭が始まる時間が近付くと、司はいつも通り学園の敷地全域に魔力の波紋を飛ばし、結界を展開させ、耳に付けているイヤフォンマイクをオンにする。
「初めての学園祭だ。俺も楽しむぞ」
 満喫する気満々な司であったが、来校してきたある人物によって、淡い期待を打ち砕かれる事になるとは、司も思ってもみなかったのだった。