お嬢様重奏曲!

「わしはただ孫の幸せを願っているだけじゃ。なぜそれを邪魔する?」
「薫さんの幸せ? はっ笑わせるぜ。これは薫さんじゃなくあんたの幸せじゃねえか」
「なぜそう思う? 本当に望んでいる事やも知れんぞ? のう? 薫」
「…………」
 薫は何も応えず顔を俯かせている。
「じゃあだったらなんで彼女は笑っていないんだよ。幸せだったら笑ってるはずじゃねえか」
「ふん。分かった事を言いよる。薫は女である前に神楽の人間じゃ。お前と同じ物差しで計るでない。
「違う! 彼女は神楽の人間である前に一人の女の子だ!」
「見解の相違じゃな」
「だから俺は薫さんを連れ出しに来たんだ」
「黙れ小僧。わしの言うとおりにすれば、間違いないのじゃ。知った口を叩くな」
「あんたこそ! ただ血が繋がってるだけの他人じゃねえか!」
「なっ!」
 これにはさすがの総帥も顔を赤くしていた。
「他人の幸せなんざ他人は分からんもんさ。あんたにも、そして俺もな」
「では別荘での件はどう見解する気じゃ? 貴様がなんと言おうと、命を狙われたのは事実じゃ」
「あんだよ。薫さんには危険はおよんでないし、あれから俺を恐れて何もないじゃんか」
「浅はかじゃな。万が一何かあったらどうする? 事が起きてからでは遅いのじゃ。ならばわしの目が届く範囲に置くのが一番じゃ。だから学園も辞めさせる」
 総帥の言葉に薫の肩が少しだけ震えたのが、司に見えた。
「じゃあ聞くが」
「なんじゃ」
「籠の中に入っている鳥は幸せなのか? 確かに天敵やら餓死する事はなく、安全だろう。だが大空を自由に羽ばたく事を許されず、閉じた世界でただ生かされているのはもう鳥とは呼ばない」
「ふん。自由のために死ぬなどまさに愚の骨頂。愚か者どもの末期じゃ」
「…………見解の相違ってやつだな」
 司はここで総帥から視線を外し薫を見る。
「じゃあ薫さん。君はどうしたい?」
「え?」
 ここにきてようやく薫は顔を上げた。
「結局は君の意思だ。もし君が残ると言うのなら、素直に立ち去ろう。だけど飛び立ちたいと言うのなら、俺は全力を持って応えよう」
「わ、私は………」
 薫は視線を落とし、答えを出せないでいた。