「あら? 司の知り合いなの」
「知り合いって言うかまぁ似たようなもんかな?」
「理事長、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう。理事長」
 ここは礼儀として二人とも木の葉に挨拶をする。
「あの………御影さんはどうして床に?」
「ん? ああ。今人生における無力さを噛み締めてたんだ」
「は、はぁ。そうなんですか。なんか大変そうですね」
「なんでやねん。薫。今の何をどうしたらそこまで重く感じとれるん?」
 隣にいた女の子が抜群のタイミングでツッコミを入れる。
「しっかしなんやな? あんたが噂の御影司かいな? まぁ思うておったよりかはマシやな」
 まるで人を品定めするように司を見つめる。
「…えっと、君は?」
「ウチか? ウチは桜塚美琴言うねん。よろしゅうな?」
「あ、ああ。よろしく」
 美琴の勢いに圧倒され思わず後ずさる。
「そうだ! あなたたち。調度いいところに来てくれたわね。用事を頼まれてくれないかしら?」
 木の葉は嬉しそうに柏手を打ち薫と美琴を見る。
「いいですよ。美琴もいいよね?」
「そらま、理事長の頼みやし断るつもりはないけど」
 二人の了承を得て、木の葉は司の肩を叩く。
「彼を寮に案内してほしいのよ」
「寮に、ですか?」
「そら構へんけど」
 二人は返答をどうにも困っていた。
「なんか問題でもあるのか?」
 司が薫に尋ねると薫は美琴と顔を合わせ、申し訳なさそうに答えた。
「あの…ですね? 寮の部屋は相部屋でして」
「ふむふむ…それで?」
「部屋の数が学生分しかないんです。御影さんは急遽入学したようなものですから」
 そこまで言われればいくら司でも勘付く。
「……………それってつまり」
「あんたの部屋が無いっちゅー事やな」
 薫が言い出せなかった言葉を美琴はなんの躊躇もなく言い切った。
「そりゃどういう事だよ! 木の葉!」
 掴み掛かろうとする司を手で木の葉は制する。
「まあまあ。落ち着きなさいって。ちゃんとあんたの部屋を用意してるわよ」
「でも今、どこも一杯って言ってたじゃんかよ」
 実際は部屋が満席でも相部屋は出来るはずなのだが、男の司が女の子と相部屋をするわけにもいかないのだ。