そしていよいよ試験の時間がやってきた。
 スケジュールとしては普通科目で二日。特別科目で二日の合計四日で行われる。
「誰にケンカを吹っ掛けたか教えてやる」
「そっちこそ後で泣いて謝っても知らへんで」
 教師が教室にやってきて、テスト用紙を配布する。
 そして始業を知らせるチャイムが鳴り、試験がスタートする。
 司はこの普通科目に全力を尽くす事にした。
 ここで点数を稼がなくては司に勝利はない。
 特別科目は一般常識と特別な礼儀作法が基準となるため、日々の積み重ねが必須になるからだ。
 第一日目が終了した時点で美琴は肩をがっくりと落としていた。
「よう。美琴。調子はどうよ?」
 司の声にビクッと肩を震わせ、ゆっくりと振り返る。
「…ふっ。屁のツッパリはいらんねや」
 弱々しい声で態度は大きく見せる。
「いや。美琴。一応女の子なんだから、屁のツッパリとか言わない方がいいぞ?」
 どうにも美琴はお嬢様にしては砕けている。
 だからこそ司は名前を呼び捨てしたり、タメ口出来るのだ。
「薫さんはどうでした?」
「私ですか? 私は…まあまあでした」
 薫の様子は戻っていたが逆にそれが司にとって怪訝に感じられた。
 そして二日目。
 とうとう美琴は力尽き机に倒れ込んでいた。
「……だ、大丈夫か? 美琴」
「返事がない。ただの屍のようだった」
 なにやらどこかで聞いたセリフである。
「そんだけ元気ありゃ大丈夫だな」
「なんでやねん!」
 司のザオ〇クのおかげで美琴は瞬時に蘇りツッコミを入れる。
「………薫さん」
「なんですか? 司さん」
 今見た限りでは笑顔である。
「悩みがあるんなら聞くけど? 俺たちで良ければ、だけど」
 司は優しく微笑み尋ねる。決して強要しない、薫に任せる、そんな笑顔だった。
 美琴や咲枝も同じような表情を見せていた。
「いえ。そんな。ありがとうございます。司さん。私なら平気ですから」
 薫は精一杯笑って見せる。
「…………平気、ね」
 聞こえない声で司は呟く。
 平気と言う事は悩みがあるのだろう。
 司は薫から打ち明けてくれるまで待つ事にしたのだった。