入学式も終わり司は木の葉の元へと向かっていた。
「あんのババァ! なんて事しやがる! 問い詰めてやる」
 大股で理事長室へと向かう。
 今日は入学式だけなので廊下にも生徒がまばらしかいない。
 横切る生徒ほとんどが振り返っていたが、今はそんな事など些細な事ものだ。
 しばらく歩いていると廊下の先に教員を引き連れ歩いている木の葉を発見した。
「おい! 木の葉!」
 人目を気にせず木の葉の名を叫ぶ。
 司の声に気付き振り返った木の葉は一言二言教員に告げ、先に行かせ司を待つ。
「こら、司。あんたはもう学園の生徒なんだから理事長を呼び捨てにするのはどうかしら?」
「はぐらかすな。これはどういう事だよ!」
「これとは?」
「しらばっくれるなよ? なんで俺がセレスティア学園の生徒にならなきゃないんだよ?」
「あら? 不満?」
「それ以前の問題だ。これは契約違反の上に、ここはお嬢様学校だぞ? 男の俺が通えるはずないだろ」
「あら? それなら問題無いわ。だって入学に関しては、当主から許可をもらったし」
 現在御影家の当主は司の父である。面白好きの父ならやりかねない。
「それにこの学園の所有者は私よ。つまり私がルールなの」
 つまりこの学園に関して言えば、木の葉が白と言えば黒も白になると言っているのだ。
「あんたって人は……」
 何もかもが最初から仕組まれた事だったのだ。
 司は忘れていた。木の葉は悪戯する時は常に無駄に全力を出す事を。
「あっそうそう忘れるとこだったわ。あんたの荷物、もう寮に送ってあるから」
 このセリフが司にトドメを刺した。
 司は膝から崩れ落ち床に両手を付く。
 まさに完敗とはこの事である。
 完膚無きまでに叩きのめされた司はその場から立ち上がる事が出来ずにいた。
「ふっ。司ごときがこの私に刃向かおうなんて十年早いのよ」
「……………こんちくしょう」
「さぁ。分かったらさっさと立って荷物の整理でもしてきなさい」
「あれ? もしかして御影さん、ですか?」
 苗字を呼ばれ司と木の葉が振り向く。
「神楽さん?」
 そこには今朝司が助けた薫とその友達であろう生徒が二人立っていた。