「えっと…それはつまりやな?」
 美琴は言葉を探し慌てている。
「ごめんなさい。そうだよね? これじゃ司君に失礼だよね」
 薫の表情が暗くなる。
 それを見て司はため息を吐き笑って見せた。
「何だよ。それくらい。そんな事なら言ってくれりゃいいじゃん。もっと俺を信頼してくれよ」
「それじゃあ!」
「ああ。引き受けてやるよ」
 それを聞いた薫は一気に表情が明るくなった。
「んじゃ俺は木の葉さんと親父に報告して、スケジュールを調整するからさ。薫さんたちはちゃんと両親から許可をもらう事。これが出来なきゃ流石に駄目だからな」
「はい。分かりました」
「分かってるがな」
「承知しております」
 三者三様の返事をすると、司は満足げに頷いて見せる。
「んじゃ両親への報告結果は明日聞かせてくれ。俺は今日中に報告済ませて、スケジュール調整しておくから」
 と司は席を立ち鞄を引っ掴む。
「んじゃまた、明日な」
 三人に別れを告げ先に教室を後にした。
 とりあえずまずは木の葉の元へと向かい、報告する。
「………ってなわけで、ゴールデンウイークは名目上、彼女らの単独護衛をしなくちゃならないんで、他の仕事は出来ないんだ」
「分かったわ。いいんじゃない? 司なら向こうのご両親たちも納得するでしょう。私からも仕事の調整をしておくわ」
「なんかすみません。こんな我が儘を言って」
「何言ってるのよ? 私は司に学生生活を満喫してもらうために、呼んだのよ? こういう事ならむしろ大歓迎よ」
 木の葉の許しを得てとりあえず安心する。
「それにこんな我が儘を言えるのも後ちょっとですものね?」
「…………ああ」
 正式に御影を継げば、御影の看板のために、一族を率いていかなくてはならない。こんな我が儘など決して許されないだろう。
「楽しんでらっしゃい。もしまぁありえないでしょうけど、当主が断ったら私に言いなさい。どんな手を使っても首を縦に振らせてあげるから」
「…ははは。それは頼もしいよ」
 胸に立ち込める不安を強引に無視して、司は理事長室を後にした。
「さて。後は親父だけだな」
 司は現当主である父親に連絡を取るため自室へと戻って行った。