剣道大会も終わりようやく女装地獄から解放された、ゴールデンウイーク前の事である。
「……って言うのはどうかな?」
「ええ考えやな。ウチも休み中どうしよか考えてとこや。咲枝もええやろ?」
「はい。私も構いませんが……」
 咲枝は今も眠りの世界を旅している司を見る。
「もちろん誘うやんか。なあ? 薫」
 美琴は悪戯っぽく笑い薫を見る。
「え? えっと。その…うん」
 顔を赤くさせながら薫は頷く。
「決まりやな。さすがに女の子だけって言うのは不安やし、司が一緒なら親かて許してくれるやろうしな」
 まだそれほど月日は経っていないが、司がある程度特別な職業みたいなものに就いているのは、共通認識であった。
「司、起きてや。司」
 美琴が体を揺さ振る事数回。
「……………んあ?」
 重たい体を起こし、司は目を覚ました。
「何だ?」
「突然やけど、ゴールデンウイークってなんか予定あるん?」
「ゴールデンウイーク? ちょっと待ってな」
 懐からスケジュール帳と携帯を取り出す。
「………んっと。とりあえず今のところは、これと言った仕事は入ってないな」
「そかそか。ほら、薫」
「う、うん。あのね? 良かったらでいいんだけど、今度のゴールデンウイークは皆で私の別荘で過ごす事になったんだけど、司君もどうかな? って思って」
「どうって」
「あ、無理ならいいの。私の我が儘で司君を困らせたくないし」
「いや、そうじゃなくてさ? 男の俺が参加してもいいのか?」
「うん。司君さえ良かったら、だけど…」
 とうとう言葉が尽き顔を俯かせる薫に、ここでようやく美琴が援護に入る。
「薫の別荘にはウチらだけで過ごすつもりやけど、流石に親が許してくれへんやろ?」
「そりゃそうだろうな?」
 彼女らは大富豪の令嬢なのだ。さすがに付き人や護衛なしには、参加など認めないだろう。
「そこで司の出番や。なんや知らんけど、司なら親も許してくれると思うんよ」
 確かに御影の次期当主の司ならば、護衛何十人よりも信頼してくれるだろう。
「って事はつまり俺を利用して友達だけで過ごしたい。そういう事だな」
 司の言葉に美琴はギクッとしていた。