大会の開会式も終わり、いよいよ試合が始まる。
 相手はいきなり全国大会の常連校。厳しい戦いになるが、逆にここで落としておけば、後が楽になると言うものだ。
「それではただいまよりセレスティア学園対白金学園の試合を始めます。では第一試合を始めます。選手は前へ。
 とうとうセレスティア学園剣道部の未来がかかる試合が始まった。
 最近は緊張でガチガチだったが、打ち合っていくうちに体の堅さも解れていった。
 試合が副将の茜まできて勝率は一勝二敗。
「ここは勝って、御影に繋ぐ」
「頑張れ! 先輩」
 茜は一度力強く微笑み、試合へと赴く。
 茜の動きは以前司が戦った時よりも数段良くなっていた。
 いや茜だけではない。部員全員が最初と比べレベルが上がっていた。
「今まともにやったら確実に負けるな」
 それくらい今の茜は強いのだ。
「胴!!!」
 茜得意の下段からの飛び込み胴が見事に決まった。
「一本! それまで!」
 三本勝負のうち二本を確実に取り、二勝二敗となった。
「後は任せたぞ。御影」
「任せられましょう」
 茜とハイタッチして司は場内へと入る。
「司さーん! 頑張ってください!」
 薫の声援が聞こえる。
 司は高々と左手を上げて声援に応えた。
「それでは大将戦を始めます。互いに礼!」
 司と相手の選手が頭を下げる。
「始め!」
 審判の合図と同時に相手が打ち込んできた。
 いい踏み込みではあったが、司は余裕で後退し回避する。
「……………ふぅ」
 いつものように、自然体になる。これは無行の位と言うれっきとした構えなのだ。
 ただしいつもと違うのは気迫だった。
 司が放つ気迫は会場全体を静まりかえらせるほどだった。
「あなたには悪いけど、勝たせてもらうから」
 司が踏み込むと、一瞬にして相手の選手との距離が縮まる。
「面!」
 パシーン!
 乾いた音が鳴り響く。
「い、一本! それまで!」
 次もあっという間に一本を取り、その瞬間セレスティア学園剣道部の勝利が決まった。
 礼を済ませると司は、薫を見て竹刀を掲げる。
 すると会場全体から大歓声が沸き起こったのだった。