いつものように薫と美琴に出迎えられ、司は寮の部屋を出る。
「それにしても司さんって実はとても凄い人だったんですね?」
「せやな? あのポテンシャルやらスキルは、連邦の白い悪魔かぁ! って感じやったからな」
「俺はガン〇ムか」
「え? 白い? ガン…何ですか? それ」
 一人分からない薫を置いて話を進める。
「実は司は完璧超人とちゃうか」
「んなわけねーよ。たまたまさ」
「でもダンスも凄い上手でした」
「別に自慢出来るほどじゃないって……っ!」
 一階の談話室に来ると司は何かを感じ取り、周囲を見渡す。
「まずい! 薫さん、緊急事態だ」
「ふぇ? 緊急事態って何ですか?」
「とにかく背中貸して」
 薫に有無を言わさず、薫の背中にさっと隠れる。
 そして自分はまるで薫の影だと言うかのように、ただ息を潜め背中に隠れる。
「……はは〜ん。そゆ事か」
 何かを察した美琴は司を見てため息を吐く。
「どういう事? 美琴」
「なんや。あれ見てみぃ薫」
 美琴があごで指す方を薫は見る。
「あれってもしかして琴崎先輩? どうして一年生の寮にいるんだろう?」
 首を傾げる薫を見て美琴は呆れていた。
「それほんまに言うてるん? 薫。司を探して来たに決まってるやんか」
「司さんを?」
「せや。いつぞやのどっちが強いか、ってやつ」
「あ〜あれ」
 ようやく思い出したようで、手をポンと叩く。
「だったらお相手してあげれば済む事じゃないですか…ハグッ」
 後ろに振り返りそうになった薫の首を司は強引に戻す。
「俺は始めっから、負けると決まってる勝負をするつもりはない」
 微妙な力加減で薫を歩かせる。
「何小さい事言うてん。男やろ?」
「うるさいなぁ。そういう事は正面きって対峙してから言え」
 茜に見つからないように薫の体を反転させ、後ろ向きで歩かせる。
「相手は剣道家だぞ? 勝負だって自ずと剣道になる。相手の土俵で勝てる相手じゃないんだよ。琴崎先輩は」
 どうにか寮を抜けたところで司は薫から離れる。
「ふぅ〜。紙一重だったぜ」
「なにがやねん!」
 汗を拭う仕草を見せる司に美琴は鋭いツッコミを入れた。