放課後、司は木の葉に呼び出され理事長室に来ていた。
 今回琉菜は同席していない。
「それで? 今回の仕事の内容は?」
「ん〜。今回は仕事って言うほどの仕事じゃないわ」
「そりゃどういう事だ?」
 木の葉が理事長室に呼び出す時は、決まって仕事の依頼だった。
 だから今回も仕事の話だと思っていたのだが、そうではないらしい。
「仕事と言えば仕事なのよ。依頼内容は警備よ」
「警備?」
「近々他校との交流を深めるべく、全校生徒で社交界を開く事が決まったの」
「なるほどね。つまり金持ちだらけなだけに、万が一の保険として俺に警備に就かせようって事だな?」
「そうよ。話が早くて助かるわ」
「それならそんな回りくどい言い方しなくても」
「あのね? 私言わなかったかしら? 全校生徒でって」
「……………あっ! そうか。って事は」
 そう司もその全校生徒の一人なのだ。
 つまり一人だけ枠組みから外れる事は出来ない。
「分かったかしら? つまり今回は仕事だけど、学園行事として参加してもらいたいの」
「そりゃ構わないけど、俺なんかが参加してもいいのか?」
「あのねぇ? あんたは全世界でも屈指の魔法使いの血族である、御影家の次期当主なのよ? 資格なんて十分じゃない」
 次期当主と言っても実際はほとんどが自分の父親、つまり現当主が仕切っているので実感がなかった。
「…まぁいいわ。それよりも社交界では正装が基本だから、司もちゃんと御影家の正装で出席するのよ?」
「御影家の正装って…冗談だろ?」
「あら? 私がこんな冗談を言うと思う?」
「………思わないな」
「だったらさっさと腹を決める事ね。言っておくけど、御影家の名を背負っている以上、中途半端は許さないからね」
「い、イエッサー」
 そのあまりの迫力に司は思わず敬礼するのであった。
 理事長室を後にすると司は大きく肩を落とした。
 生徒としても参加すると言う事は魔法の使用は出来る限り避けなくてはならない。
 つまり普段は持ち歩かない武器を装備しなくてはならない。
 装備と言ってもそれほど重たいわけではないが、やはりほんの少しだけ違和感を覚えてしまう。