それを見て司は満足げに頷く。
「そんだけ元気ならもう大丈夫だな」
「あ、あれ? さっきまで立てへんかったのに。司! ウチに何かしたん?」
「さあな?」
 司はわざと白を切る。 突然魔法で治したのだが、わざわざそれを言う必要はない。
「あっ、司さん! 今のって」
 薫だけが嬉しそうに手を叩く。
「入学式の時、私の足を治してくれたのと、同じやつですよね?」
「ん? まあな」
 薫も入学式の時、足をくじいて動けないでいたのを、司は魔法で治してあげていた。
「凄いですね? まるでお伽話に出てくる魔法使いさんみたいです♪」
「お伽話の魔法使いさん、ね。でも俺のはそんなメルヘンでもないし、便利でもないぞ」
「せやで薫。こないなやつが魔法使いだったら、悪さし放題やんか? 薫の着替えやお風呂だって覗いてるかもしれへんのやて?」
「ひぅ。そ、そそそそんな」
 薫は顔を真っ赤にさせ、司から一歩離れる。
「仮に俺がその魔法使いだったとしても、そんな事はせん! そして薫さんも真に受けて、信じないでください」
 薫の反応に肩を大きく落としため息を吐く。
「あっ、すみません。私ったら。司さんがそんな事しないって信じてるのに」
「まぁいいんですけど」
「それでは話がまとまったところで、そろそろ薫さんのノートを取りに向かいましょう。司様」
 そんな中やはり唯一咲枝だけが冷静で、本来の目的を見失っていなかった。
「そうだね? それじゃさっさと済ませて帰ろうか。いくら俺と一緒でも見つかったら怒られるかもしれないし」
「せやな? ほな急ごうか」
「うん。そうだね」
「では参りましょう」
「急ぐのはいいけど、そんなに引っ付かれると、動きづらいんだけど…」
 右腕には美琴が。左腕には薫が。背中には咲枝がそれぞれピッタリとくっついていた。
「女の子守るんが男の役目やんか」
「すみません司さん。でもやっぱり怖くて」
「司様の側にいるとなぜか安心出来るのです」
 司はとうとう諦め三人を見る。
「分かったよ。では今宵はこの御影司が姫たちのナイトと言う名誉を頂きます」
 司の言葉にまんざらでもない三人の表情を眺め、見事に任務を完了させたのだった。