「江崎さん。あなたは少し司を過小評価しているみたいね。御影の当主を継ぐと言うのは、言葉以上に難しいものなのよ」
「私にはあまりピンと来ませんが」
「じゃあこう言いましょう。彼が本気を出せば私なんか足元にも及ばないわ。それくらい司は強いのよ」
 あの木の葉これほど言わせる司を琉菜は改めて驚いたのだった。
 一方その頃、理事長室を後にした司は屋上に一人立っていた。
「さてっと」
 司は瞳を閉じて精神を集中させる。
 そして入学式でやった時と同様に学園の敷地全体に魔力のソナーを飛ばした。
 司の放った魔力の波動は一気に学園の隅々まで行き渡る。
 後は向こうがアクションしてくるのを待つばかりである。
 まだ夕方であり多くないとは言え生徒たちがいるため、まだ仕掛けてこないと思っていた矢先の事である。
「………ん? この感じは」
 一カ所だけ魔力の流れが淀んでいるのを感じ取る
「いきなりかよ。随分とせっかちなやつもいるもんだ」
 床を蹴り上空へと飛び上がると、司の姿はそのまま一瞬にしてその場から消え去った。
「確か反応はここら辺だったんだが…」
 司が次に現れた場所は学生寮の天井上だった。
「ナンダキサマハ?」
 司の後ろで声が聞こえる。
 ここは天井で司な後ろはすでに空中である。となれば答えは一つしかない。
「俺か? 俺はお前を滅する者さ」
 司は振り返らずに答える。
「お前知ってるか? 勝手に他人の敷地に入ると、不法侵入って大罪になるんだぜ?」
「ワラワセルナ!」
 霊体から衝撃波が放たれる。
「これは忠告だ」
 放たれた衝撃波は司の目の前で霧散する。
「こっからさっさと出ていけ。そしたら見逃してやる」
 ここでようやく司は霊体の方に振り返る。
「ワラワセルナ! ニンゲンフゼイガ!」
「それが答えか」
 霊体の放つ無数のかまいたちを無視して、司は右腕を高らかと振り上げた。
「……………消えろ」
 静かな囁きと共に開いていた手を握る。
「バ、バカナ! ナンダコノチカラハ」
 霊体は断末魔の叫びと共にその体を霧散させ消滅したのだった。
「さて。次は」
 完全に消滅したのを確認し、司は再び姿を消したのだった。