「あ、そうそう。わたしの事は生徒会長じゃなくて、琉菜さんって呼んでね? 君とわたしの仲なんだしさ」
 まだ会って間もないと言うのにどんな仲なのかは分からないが、琉菜は軽くウィンクをする。
「それじゃあ放課後でまた会いましょう。司君」
 笑顔で手を振り琉菜は司の前から立ち去って行った。
「何なんだ? あの人は一体」
 とりあえず折り畳まれたメモ用紙を開いて見てみると、予想した通り仕事の依頼だった。
 そこには簡潔にしか書かれていないため、詳細は放課後の理事長室で、と言う事なのだろう。
「学生になってから初めての仕事か。気合いを入れるか」
 とその前に学生の本分は勉強する事にある。
 腕時計で時間を確認すると、予鈴まで危ない時間になっていた。
「んじゃ、仕事の前に勉強をこなすとしますか」
 司は自分の気合いを高め教室へ駆け足で向かって行った。
 教室に着くと生徒たちはみんなバラバラに座っていた。
「………えっと。これはどうすれば」
「司さーん。こっちですよ」
 困惑している司のところへ薫が声をかけ、手招きをする。
「薫さん? それに美琴に…咲枝さんまで」
 司はいまだ困惑しながらも三人のところへと向かう。
「おはようございます。司さん」
「おはよう。司」
「おはようございます。司様」
 三人がそれぞれ挨拶をする。
「おはよう。薫さん、美琴それに咲枝さん」
 司も三人に挨拶を済ませる。
「私の隣が空いているのでどうぞ」
「ああ。ありがとう」
「ここではな? 席は決まってないんや。せやからみんな好きな場所に座ってるんよ」
 司の疑問に美琴が答えた。
「なるほどね。ようやく納得したよ」
「移動教室の時もそうですが、ほとんどの皆さんは座る場所が決まっているものなんですよ」
 美琴の説明に咲枝が後付けする。
「なんて言うか、ここってホント自由な校風だよな?」
「ふふっ。確かに変わってますよね?」
「せやけどあの理事長にあの生徒会長やしな。こんなもん違うか?」
「確かにそれは言えてるかもな」
 なにせ理事長が木の葉である。まさにやりたい放題なのだろう。