校舎の中に入ると誰かを探しているのか、なにやら一年生の玄関をうろうろしている生徒がいた。
「…………あれは」
 その顔には司も見覚えがあった。
 入学式で壇上に立ち木の葉に負けず劣らずの事を言っていた生徒がいたような気がした。
「あれは確か生徒会長の……」
 司の言葉に薫と美琴が振り向く。
「確かに生徒会長の須藤・F・琉菜先輩やな」
「須藤先輩、誰か探しているみたいだけど」
 笑顔で生徒たちに挨拶しながらキョロキョロと動かした視線が、ふと司とぶつかる。
「あ〜! やっと見つけたわよ!」
「?」
 どうやら琉菜は司に用事があったらしい。
 ズンズンとは聞こえてこないが、司へと近付いてきた。
「悪いけど、ちょ〜っと彼を借りていいかしら」
「え? ええ。構いませんけど。ねぇ? 美琴」
「まあウチは別に構へんけど」
「そ。良かった。それじゃ司君。ここじゃなんだから場所を移しましょ」
 と琉菜は司の腕に自分の腕を絡める。
「ちょっ。何を。悪い二人とも。先に行っててくれ」
 薫と美琴から別れ司は渋々琉菜に付いて行った。
 琉菜が向かった場所は人通りの少ない廊下の一角だった。
「しかし君も隅に置けないわね? もう仲良くなった女の子がいるなんて」
「それで? 俺に何か用ですか?」
「あら? スルーしちゃうの? 残念ね。お姉さんもっと詳しく聞きたいんだけどなあ」
 何となく木の葉とタイプが似ている。
 この手のタイプは相手の話に乗っかるとツケあがる。
「用がないんなら、俺はこれで」
「あ〜ん。もう待ちなさいよ。話があるのは本当だから」
 立ち去ろうとする司を止めて琉菜は、ポケットから折り畳まれた一枚のメモ用紙を取り出した。
「はい、これ」
「…これは?」
「理事長からアルバイトのお知らせって言えば、分かるかな?」
 理事長、つまり木の葉から仕事の依頼関係なのだろう。
 だが一つだけ気になる点がある。
「生徒会長」
「ん? 何かしら」
「あなたは何か知っているんですか?」
「さてね? 答えはそれの中身を見て、理事長室に行けば分かるわ」
 司の視線に琉菜は笑顔で受け止めた。