三人の前までやってきた茜はその場で仁王立ちする。
「それはぜひ私も聞かせてもらいたいものだな」
「えっと……それは」
 薫と美琴の方をちらっと見ると、薫は小さく謝り美琴は無言に徹していた。
 ここは諦めて答えるしかないだろう。
 この手のタイプは妙にプライドが高いものだ。
「そりゃ試合をすれば俺が負けるだろうさ。俺は使えると言うだけで、使いこなしているわけじゃないから」
 司の答えにいまだ満足していないのか、その視線は更に強くなる。
「それは裏を返せば試合じゃなければ勝てると聞こえるのだが?」
「どう受け取るかはそっちの自由だ。まあ否定はしないけど」
「ほう? その根拠はなんだ?」
「実戦において相手によって条件や環境が異なるからさ。剣道では卑怯とされても、剣術では勝てばいいんだからな」
「ふん。そこまで言うか。ならばこの私と」
 この瞬間、司はヤバイと感じ取った。これ以上言葉を続けさせては駄目だと。
「さ、さあ。二人とも。もうすぐ行かないと遅刻しちゃうよ」
「え? あの」
「なんやまだ」
 半ば強引に二人を立たせる。
「おい! 待て。まだ話は終わってないぞ」
「そんじゃ先輩。先輩も早くしないと遅刻しますよ?」
 まだ何か言っていたが茜を置いて司は薫と美琴を引き連れ食堂を後にした。
「ふう。やれやれ」
「司さん。ごめんなさい。私のせいで」
「ん? ああ気にしなくていいよ。ああ言うタイプは遅かれ早かれ、絡んでくるから。それが今だったってだけさ」
 薫が表情を曇らせていたため、司はすかさずフォローする。
「せやけど、あれはいくらなんでも強引過ぎたんと違う? 下手したらあの取り巻きたちに悪さされるで?」
「そん時は琴崎先輩に言ってやるさ。自分の取り巻きの教育くらい、自分でやっとけってな」
「えらい強気やな」
「まっ自分だけなら、我慢出来るしな。だけどもし二人に悪戯するようだったら…………」
 司はそれ以上、言葉を続けない。
 だが何を言いたいかはその雰囲気だけで容易に察する事が出来た。
「ありがとうございます。司さん」
「ありがとな? 司」
 司の気持ちを感じ取り二人は笑顔で感謝したのだった。